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2025/01/29 今日の論文

Approach to and Treatment of Thyroid Disorders in the Elderly

Med Clin North Am. 2012 March ; 96(2): 297–310. doi:10.1016/j.mcna.2012.01.013.


今日は高齢者でよく遭遇する甲状腺機能低下症についてまとめました。

チラーヂンは少量から、特に心疾患に注意して開始するよう指導された思い出があります。

TSHの治療開始基準と治療管理目標が具体的な点と、実際の内服の注意点がまとまっており勉強になりました。

皆さんは早朝に飲ませるよう必ず指導していますでしょうか。。。。

notebookLM ChatGPTを用いてまとめています


1. 高齢者の甲状腺機能低下症の特徴

  • 発生率の増加
    • 高齢者では自己免疫性甲状腺炎の増加により、発生率・有病率が高まる
  • 診断の難しさ
    • 症状が軽度または非特異的で、他の疾患と紛らわしいことがある
    • 古典的な症状を示さない場合も多い
    • 加齢に伴うTSH値の上昇や非甲状腺疾患によるホルモン値の変化が診断を複雑にする
  • 認知機能・身体機能への影響
    • 軽度の甲状腺機能低下症は影響がないとする研究結果もある
  • 症状の特徴
    • 疲労感、認知機能障害、うつ病など加齢変化と類似し、診断遅れの原因となる
    • 症状が乏しいこともある

2. 治療適応の判断

  • TSH値による治療適応
    • TSH 4.5~10 mIU/L
      • ルーチンの治療は推奨されない
      • 無治療でも健康上の悪影響は少ないとする研究結果あり
      • 甲状腺疾患の家族歴や高脂血症がある場合は治療を検討
    • TSH >10 mIU/L
      • 治療を推奨
      • 明らかな症状がある場合は積極的に治療を考慮
  • 症状の有無による治療適応
    • 甲状腺機能低下症に関連する明らかな症状がある場合は治療を推奨
    • 軽度なTSH上昇が加齢に伴う変化か病的なものか判断が難しい場合も
  • 高齢者における治療の考え方
    • 心血管疾患リスクや骨量減少のリスクを考慮し慎重に判断
    • 過剰なLT4投与を避けるため、TSH目標値を個別に設定(例:1.0~4.0 mIU/L)

3. LT4投与量の注意点

  • 高齢者の必要量は少ない
    • 加齢による代謝低下や除脂肪体重の減少が影響
    • 一般的に若年者より1日あたり20~40mcg少ない
  • 低用量から開始し慎重に増量
    • 開始用量は25mcg程度から
    • 目安は1.0~1.2 mcg/kg/日で、個々に調整
  • 過剰投与のリスク
    • 心房細動や骨量減少のリスク増加
    • 心疾患の既往がある場合は特に慎重な増量が必要
  • TSH目標値の調整
    • 高齢者ではやや高めのTSH(例:0.4~4.0 mIU/L)を許容することも
    • 心血管系のリスクを考慮して個別判断

4. LT4服用方法の注意点

  • 基本は空腹時服用
    • 朝食1時間前が推奨
    • 食事と同時に服用すると吸収が38~40%低下
  • 就寝時服用の条件
    • 夕食後2時間以上空ける
  • 服薬アドヒアランス向上の工夫
    • 毎日同じ時間に服用
    • ピルケースやアラームの活用
    • 服薬の置き場所を工夫(例:歯ブラシの近く)
    • 定期的な薬局フォローアップ
  • 製剤の選択
    • ソフトジェルカプセルや液状製剤は吸収が良く、食事の影響を受けにくい
    • 胃腸の状態が悪い場合に適する

5. 他の薬や食品との相互作用

  • 薬物相互作用
    • 吸収を妨げる薬:鉄剤、カルシウム剤、PPI、制酸薬
    • 代謝を促進する薬:フェニトイン、リファンピシン
    • 服用時間をずらす必要あり
  • 食品との相互作用
    • 大豆製品・コーヒー・グレープフルーツジュースが吸収を阻害
    • 食事と一緒の服用を避ける

6. 病気による影響

  • 吸収不良の原因となる疾患
    • セリアック病、乳糖不耐症、膵機能不全など
    • 必要に応じてソフトジェルカプセルや液状製剤を検討
  • 腎疾患の影響
    • ネフローゼ症候群などでLT4の必要量が増加する可能性

7. その他

  • 製剤変更の注意点
    • 異なるブランド・ジェネリック医薬品は慎重に変更
    • 生物学的利用能が異なり効果に差が出る可能性
    • 可能であれば同じ製剤を継続使用
  • 自己判断での服用中止は避ける
    • 症状が改善しても中止すると再発のリスクあり
  • 定期的なモニタリング
    • 年1回程度の血液検査・診察を推奨
    • TSH値のモニターを継続し、必要に応じて投与量調整

8. 特に注意すべき状態

  • 粘液水腫性昏睡(重度の甲状腺機能低下症)
    • 意識障害、低体温、徐脈などを伴う重篤な状態
    • 迅速な治療が必要(静脈内投与)
    • 心血管疾患リスクを考慮しT3製剤の併用も検討(過剰投与に注意)
  • 心血管疾患合併例の対応
    • LT4投与開始・増量で狭心症や不整脈悪化の可能性
    • 低用量から開始し、慎重に増量

9. その他の注意点

  • 心血管疾患リスクが高いため慎重な治療が必要
  • 腎機能低下によりLT4の排泄が遅れる可能性
  • 多剤併用による薬物相互作用リスクが高い
  • 服薬アドヒアランス低下のリスクがあるため、指導を徹底

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